宮城県議会

宮城県 9月議会/本会議 一般質問
岸田清実県会議員(社民フォーラム県議団)
「4病院再編問題と刈田綜合病院問題について」
(2022年10月5日 水曜日)

 岸田清実県会議員
 大綱二点について、知事の所見を伺います。
 大綱一点目、四病院再編問題と公立刈田綜合病院問題について伺います。
 初めに、四病院統合・合築問題について伺います。
 県立がんセンターと仙台赤十字病院の移転統合についてですが、県が七月一日に、県議会環境福祉委員会に報告した「四病院再編に係る新病院の具体像について」は、がんを総合的に診療できる機能についての記載がありません。そもそも今回の再編は、二〇一九年に公表された、宮城県立がんセンターの今後のあり方に関する報告書における、「高齢化等により増加する合併症への対応など治療が高度化することを踏まえて、がんセンターの医療機能を強化し、『がんを総合的に診察できる機能を有する病院』とすることが必要である。」との提言がスタートだと、県自身が説明していたのではなかったでしょうか。具体像についてと提言との関係について、所見を求めます。
 同じく報告書では、宮城県がん政策としてがんセンターの医療機能を活かした高度・先進医療すなわち、希少がん、難治がん、放射線治療等を含むがん医療機能を維持し、宮城県の責任においてがん医療に特色を持たせた病院とするべきであると述べられており、ロボット手術、外来抗がん剤治療、高精度放射線治療は、今後も維持されるべきものと考えますが、いかがでしょうか。
 また、都道府県がん診療連携拠点病院及び研究所も同様に維持されるべきですが、併せて所見をお示しください。
 名取市から提案のあった土地は、現在のがんセンター敷地面積の三分の二であり、がん診療施設、緩和ケア病棟、救急医療センター、周産期母子医療センター、災害拠点施設、感染症病棟をこの中に整備することは困難と思いますが、見解をお示しください。
 また、病院は検査・治療の大型機械設置や、手術室、患者動線などを考えると、高層化には限度があると言われており、敷地面積と病院機能は関連性があります。提案された敷地を前提とした病院機能の想定や配置が進んでいるということか、所見をお示しください。
県立病院機構職員の雇用について伺います。
 統合後の経営主体は、依然、明らかになっていませんが、現在勤務している職員にとって雇用の見通しは、本人と家族にとっても切実かつ重大な問題です。経営主体がどのような形になろうとも、現在勤務している職員の雇用に県は責任を持つべきと考えますが、いかがでしょうか。
 県立精神医療センターと東北労災病院の移転合築について伺います。
 県は、「新病院の具体像について」の中で、県立精神医療センターが担う機能として、まず精神科救急を上げ、説明の中では、県の中央に位置することや、高速道路のインターに近い利便性を述べています。現在の精神科救急のうち、土日・祝日は、県立精神医療センターと他の輪番病院の役割分担が機能し、それぞれが相応の外来診療と入院を受け入れていると評価されています。県立精神医療センターが特に引き受けているのは夜間救急ですが、そのうち措置入院が半数であり、それは残りが措置決定までの手続に時間を要するため、入院が夕方になる結果だと考えられます。措置入院とは、自傷他害のおそれのある精神疾患患者を、宮城県知事あるいは仙台市長の命令で強制的に入院させるもので、警察からの通報が最も多く、精神保健指定医二名の診察、判断が必要となります。夜間、土日・祝日は、診察する医師を探すことに時間を要することが多く、必ずしも距離の遠近が救急の利便性につながるわけではありません。この点についての所見を求めます。
 「新病院の具体像について」では、精神障害に対応した地域包括ケアシステムの構築をサポートする機能が挙げられています。県立精神医療センターは、この取組を数十年前から先進的に実践してきました。名取市を中心に、デイケア、訪問看護などのアウトリーチ機能、退院後の受皿としてのグループホームやアパートの確保など、地域を粘り強く説得し、地域でサポートする人材や団体を養成してきています。病院と地域が一体となった精神科治療をつくり上げてきたのであり、歴史的財産と言ってもよいでしょう。今後もこの財産を引き継いでいくことが必要であると思いますが、急性期を担っていた県立精神医療センターが移転となれば困難に直面します。これまでの地域支援の評価と移転後の課題について、いかがお考えでしょうか。
 現在、県立精神医療センターでは、病院を起点とする実践をもとに、今後更に長期入院者の地域移行を進めるために、仙台市精神保健福祉総合センターや各地域の事業所と退院者の地域生活のサポートをする体制を協議する場をつくっています。今まさに実践していることが地域包括ケアシステム構築のサポート機能だと思いますが、知事の認識を伺うとともに、デイケア、訪問看護など、具体的な地域実践があってこそ、サポートする知見や経験が積み重ねられるのだと考えますが、併せて所見を伺います。県の中央部にあるからできるというわけではないのだと思っています。
 県内における精神科基幹病院のバランスについて伺います。
 病院周辺には、通院などのために患者が住むことになりますが、収入が十分とは言えない患者も多く、低廉なアパートなどが必要とともに地域のサポート体制が欠かせないことは、県立精神医療センターでの地域実践で明らかです。一方、住居で言えば、仲介業者、所有者、地域の理解を得るために長い時間と大変な努力が必要です。サポート体制も簡単にはでき上がりません。移転後の住居の確保、地域の理解、サポート体制の構築について、県はどのように見通しているのか伺います。
 県内各圏域での入退院数を通して、そのエリアの基幹的病院を見ると、大崎・栗原医療圏には古川グリーンヒルズ、石巻・登米・気仙沼医療圏にはこだま、仙台市以北には緑ケ丘、仙台市内には東北会、国見台などが基幹的病院として機能し、仙台市以南及び仙南医療圏は、県立精神医療センターが基幹的病院となっています。もし、県立精神医療センターが富谷市に移転となれば、仙台市以南及び仙南医療圏でのベッド回転率一・〇以上のアクティビティーの急性期治療を主とする病院がなくなることになり、影響が大きいと思いますが、いかがでしょうか。
 精神科クリニックは、仙台市内を中心に増えているとはいえ、予約診療で、しかも混雑している現状から、太白区の六百人をはじめとする仙台市以南の通院患者の受皿確保はかなり困難と考えられますが、所見をお示しください。
 東北労災病院との合築では、身体合併症、複数疾患への対応が言われていますが、精神科患者が他病院の診療科で治療を受ける場合は、受入れ側で相当の意識改革が必要であると指摘されています。協定があるだけで進むものではありません。これまでは、院内に精神科のある仙台市立病院、東北大学病院、国立仙台医療センター、東北医科薬科大学病院での協力で、身体合併症患者の診療問題を解決してきています。同じ運営主体にある診療科だからこそ、理解と連携が適切に行われてきた経過があります。この点については、どう考えているでしょうか

■ 村井知事
 岸田清実議員の一般質問にお答えいたします。大綱二点ございました。
 まず、大綱一点目、四病院再編問題と刈田綜合病院問題についての御質問にお答えいたします。
初めに、四病院の再編に係る新病院の具体像に関する常任委員会報告についてのお尋ねにお答えいたします。
 令和元年の県立がんセンターの今後のあり方に関する報告書では、目指すべき方向性として、がんを総合的に診療できる機能を有する病院や、他の医療機関との連携・統合の検討の必要性が示されました。今年七月の「新病院の具体像」は、我が県の政策医療の課題解決の観点から、関係者と鋭意協議している状況を整理したものであります。その中では、令和元年の報告書の趣旨も踏まえ、合併症のある患者への対応など、がんを総合的に診療できる拠点病院を目指しているものであります。
 次に、県立がんセンターの医療機能や研究所機能の維持についての御質問にお答えいたします。
 ロボット手術や外来抗がん剤治療、高精度放射線治療については、現在協議中の事項でありますが、東北大学病院などとの機能分担や連携により、効率的で効果的な医療提供体制の確保を目指します。 また、新病院は、がん診療連携拠点病院の位置づけを引き継ぐものと考えております。研究所機能につきましては、東北大学病院や東北医科薬科大学病院との連携と補完を念頭に引き続き検討してまいります。
 次に、県立病院機構職員の雇用についての御質問にお答えいたします。
仙台赤十字病院と県立がんセンターの統合による新病院の経営主体につきましては現在協議中でありますが、県といたしましても現在の職員には、新病院において高い意識とやりがいを感じながら力を発揮してほしいと考えております。今後、新病院についての概要が固まりましたら、雇用の継続や確保に向けて県立病院機構と連携しながら責任を持って対応してまいりたいと考えております。
次に、県立精神医療センターがこれまで実践してきた地域支援への評価と移転後の課題についての御質問にお答えいたします。
 県立精神医療センターは、これまで長い時間をかけてグループホームなどの社会資源との連携体制を築き、特に県南部において大きな役割を果たしてきたものと評価しております。県としては精神科医療における地域包括ケアの全県的な推進が必要と考えており、そのためには医療機関の機能分担や協力体制の強化に向け、県立精神医療センターがサポートの役割を果たしていくことが課題と考えております。

□ 保健福祉部長
 大綱一点目、四病院再編問題と刈田綜合病院問題についての御質問のうち、名取市から提案のあった候補地は狭く、整備は困難ではないか、また、新病院の機能や配置に関する検討が進んでいるのかとのお尋ねにお答えいたします。
 名取市から提案のありました候補地については、平たんな整形地ですが、現在の県立がんセンターは丘陵地に位置し、斜面があるなど土地利用の条件が異なることから、一概に比較はできないものと考えております。また、病院施設の設計や配置は今後の検討ですが、候補地は新病院の立地に対応できる面積を有していると考えております。
 次に、病院までの距離が利便性につながるとは必ずしも言えないのではないかとの御質問にお答えいたします。
 県立精神医療センターは県内唯一の精神科スーパー救急を備えた病院であり、精神科救急の中心的な役割を担っておりますが、救急搬送の内訳を見ると、気仙沼市や栗原市など県北部からの搬送はほとんどない現状であります。また、救急搬送以外の措置入院や医療保護入院などの事案もあり、アクセスの視点は重要な要素であると考えております。
次に、地域包括ケアシステム構築のサポート機能についての御質問にお答えいたします。
県立精神医療センターでは、地域移行を進めるための協議の場や訪問看護などの実践を通じて、知見や経験を積み重ねているものと認識しております。今後、精神医療における地域包括ケアシステムを構築していくに当たり、県立精神医療センターが果たしてきた役割を全県的に展開していくことが求められると考えております。
 次に、県立精神医療センター移転後における患者の住居の確保等についての御質問にお答えいたします。
 現在、県立精神医療センターに通院している患者や家族の方々にとっては、病院移転後も必要なサービスを継続して受けられる体制が重要でありますので、今後、地域の医療機関をはじめ、関係者と十分に協議・調整を図ってまいります。
 次に、県立精神医療センターが富谷市に移転した場合の仙台市以南及び仙南医療圏への影響と、通院患者の受皿確保についての御質問にお答えいたします。
県立精神医療センターの移転候補地は県の中央部に位置し、県内各地からの道路ネットワークによるアクセスがよく、従来の県南部からの入院患者に加え、全県からの入院患者の受入れが可能になることが重要であると考えております。通院患者については、地域の精神科病院や診療所等の充実で対応してまいります。
 次に、身体合併症への対応についての御質問にお答えいたします。
 高齢化の影響等で増加が見込まれる身体合併症については、県立精神医療センター単独での対応が難しく、東北労災病院と合築することで円滑な救急対応や医師・看護師の相互の往診等が可能となり、体制強化が図られるものと考えております。また、合築によって医療施設と機器の共同利用や研修医の相互交流などのメリットがあるほか、異なる病院間であっても一時退院など必要な手続を行うことで、単一の病院と同様の対応ができるものです。なお、岩手県では、精神科病院である県立南光病院と総合病院である県立磐井病院を合築し、両病院の隣接のメリットを生かした対応を行っており、このような事例も踏まえながら円滑に連携できるよう引き続き検討を進めてまいります。

 岸田清実県会議員
 全然質問に答えていません。時間がないので次に行きます。
 四病院再編の関係ですが、精神科医療における地域包括ケアを全県的に展開していくという答弁がありましたが、これは県の中央部である必要はあるんですか。

□ 保健福祉部長
 精神障害を有する方の地域包括ケアは、今後の大きな課題であると考えております。現在、県立精神医療センターが地域の方々の御理解をいただいて、県における中心的な役割を担っているわけですが、これを全県的に広めたいと考えております。そのためには、各地域の医療機関にも御理解と御協力をいただかなければなりませんが、県立精神医療センターはそれをサポートする役割を担うべきと考えておりますので、そういう意味ではやはり、立地点としては県土の中央にあるということは重要であると思っております。

 岸田清実県会議員
 今実際に各団体や仙台市にも参加してもらって協議をして、長期入院者の地域移行をやっています。これは仙北も含めて対象にして、県立精神医療センターが努力してやっていますが、その関係者に聞くと、富谷にどうやって集まったらいいのかとのことで、交通の便が悪いんですよ。そのことだけから言っても、むしろマイナスになりますよ。あともう一つは、全県的に地域包括ケアシステムを展開していくときに、やはり自分の経験、知見の積み重ね、こういうものがあってこそ全県に展開できるわけです。県立精神医療センターの場合には、数十年間にわたって地域実践をしてきたことが基になって、今、仙台市を含めた全県の各種団体に集まってもらって地域移行ができるようになっているわけです。地域実践があってこそできるものと私は思いますが、これについて知事はどう考えますか。

■ 村井知事
 私と岸田議員の大きな違いは、岸田議員は足元を見て、今いる人たち、今あることをどうすればいいかということ、私は三十年・五十年先を見越して、これから人口が二割・三割とどんどん減っていく中で、どうやっていけばいいかということで、長いレンジで物事を考えているということであります。したがって、私はこの間の知事選挙で県民に信を問いたいということで、県民の皆様に名取市と富谷市にということを言って選挙に臨んだと、反対する方は、そこは絶対阻止だということでありました。したがって私は、確かに今いる人たちのことだけ、県南から通われている方々のことだけを考えたら、それが遠くになれば不便になるのは当然で、それは私も分かっています。そうではなくて、広く県全体の地域医療というものをどう考えればいいか、さきほど部長が答弁したように、県の中心部に持っていくことによって、これからの二十年・三十年・四十年・五十年先のことを考えて、そのほうが県民全体にとって利益があるという判断でやったということであります。議員おっしゃるとおりで、県南から通われている方々あるいは県南の地域医療に携わっている方々にとっては、少しでも距離が離れることは不安、不便になるということは当然のことだと思いますけれども、もっと大きなレンジで物事を判断していただきたいということをお願いしたいと思います。

 岸田清実県会議員
 知事、それは論点のすり替えなんです。今いる人たちをどうするかっていうことを言っているのではなくて、地域実践があってこそ地域包括ケアシステムの全県への展開ができるんじゃないかと聞いているんです。どうですか。

■ 村井知事
 これから、それをやるということであります。

 岸田清実県会議員
 いや、もう既に展開して始まっていると質問の中でも言ったとおりです。県立精神医療センターの地域での具体的な実践があってこそ、そういうことができるということをもう一度真剣に検討してほしいと思います。それから、時間がないので端的に聞きますけれども、富谷市に移転したときに周辺地域の医療機関などに相談しなければなりませんが、簡単に地域のサポート体制などを得ることは難しいと思いますが、その辺の見通しはどうですか。

■ 村井知事
 もちろん簡単ではないと思いますけれども、最初に県立精神医療センターが名取市にできたときも同じような問題があって、時間をかけてやってきたわけでありますので、それを今度は北のほうで展開できればということでございます。これにつきましては、選挙で県民からやっていいとお許しをいただいたと思っておりますので、しっかり対応してまいりたいと思います。